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更新日:2026年6月17日
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荒茶生産量が2年連続日本一となった鹿児島県。鹿屋市でも古くから茶葉の生産が行われています。お茶の名産地・鹿屋と「かのや深蒸し茶」について紹介します。
鹿屋市では、古くから各農家で「天日干し釜炒り茶」が自家製造されていました。明治18年には、伝統的な製茶技術の向上と手揉み茶の品質改善を目指す「改良製茶伝習所」が設置され、これを機に茶業が地元の主要産業として根付いていきました。
本市の茶業が大きな転機を迎えたのは、昭和30年代から40年代にかけて実施された、全国第1号となる「笠野原畑地かんがい事業」です。この事業をきっかけに、本市ではいち早く畑かん営農が導入され、生産力の向上や農業経営の安定化が急速に進められました。

▲畑かんを活用した茶の
防霜対策として散水する様子
広大かつ平坦で水はけのよいシラス台地である笠野原台地は、大型機械を活用した茶業に適した土地で、この地で生産される煎茶(通常の緑茶)は「かのや深蒸し茶」(以下、かのや茶)として全国に知られています。
深蒸し茶は、煎茶よりも蒸し時間を2~3倍長くかける製法で作られています。そのため茶葉が細かく、βカロテンやビタミンE等の有効成分が抽出され、とろりとしたまろやかな甘みと濃厚なコク、喉越しの良さを楽しめます。
また、深く美しい濃緑色の水色も、深蒸し茶ならではの色合いとなっています。

▲ 深く美しい濃緑色は、
かのや深蒸し茶の特徴
鹿児島県は荒茶生産量2年連続日本一

農林水産省が令和8年2月20日に公表した作物統計調査によると、令和7年産の鹿児島県における荒茶生産量は、前年比11%増の約3万トンに達し、令和6年産に続き2年連続で全国1位となりました。国内総生産量約6万8千トンのうち、本県は44%のシェアを占め、2位の静岡県(約2万4千百トン)に約5千9百トンの差をつけています。さらに、これまで他県が優位性を保っていた新茶(一番茶)の荒茶生産量でも、本県が初めて全国1位を獲得しました。
県内有数の茶産地である大隅地域や市内の各茶農家によるたゆまぬ努力が、この快挙を大きく支えています。
海外からも注目される日本のお茶

近年、日本茶の輸出量は増加し続けています。背景には日本食ブームの影響や健康志向の高まりによって、抹茶を含む粉末茶の需要が拡大したことがあります。
特に令和5年以降の伸びは著しく、令和7年には輸出量が1万2千トンを超え、輸出額は721億円(過去最高値)を記録しました。この大きな流れは、茶生産者にとって強い追い風となっています。

鹿屋市には笠野原台地を擁する中部地区のほか、海岸沿いの早場地帯である南部地区、山間部の遅場地帯である輝北地区まで長期間茶摘みができる県内有数の茶生産地です。
鹿屋市は、鹿児島県茶品評会の深蒸し煎茶の部で8年連続となる産地賞を受賞するなどの実績を残しており、まさに“ かのやの誇り” となっています。
ここでは、そんな「かのや茶」を支える生産者のインタビューや、お茶を美味しく淹れるためのポイントなどを紹介します。

鹿屋市茶業振興会長(令和7年1月~)。
学生の時にアメリカへ研修に行き、無農薬
栽培を知る。祖父の代から引き継いだ畑で
自然栽培の茶業、稲作を営む。
鶴田製茶Instagram(外部サイトへリンク)
私が茶業を始めたきっかけの一つに、鹿児島県立農業大学校時代に参加したアメリカでの海外研修があります。実家は祖父の代から農業を営んでおり、学生時代から跡を継ごうと思っていました。特に、研修先で見た無農薬栽培が印象に残っており、「自分でもできるのではないか」と考えました。
そこから自然栽培でのお茶づくりをスタートさせ、30年以上が経った今も、そのこだわりを貫いています。
海外のお茶ブームもあり、最近は好機を迎えている茶業ですが、数年前までは厳しい業界でした。
私が鹿屋市茶業振興会の会長に就任した時も、茶農家の数は減少し続けていました。また、一般的に農業は気候に大きく影響を受ける業界で近年の気候変動によって栽培も難しくなってきています。
それでも、先人たちが築き上げてきた歴史と伝統を、次の世代へと繋いでいきたいと考えています。
そのためには、生産の継続や品質向上へのこだわりに加え、まずは地元の方々にもっとお茶の美味しさを知ってもらうことが大切だと思っています。

▲市長への新茶報告とかのや茶PR

▲輝北小での茶摘み体験(蒸し工程)
鹿屋市は、これまでに県の品評会で8年連続の産地賞に輝いた実績を持つ、県内屈指の茶どころです。地元の茶農家は、新茶のPR活動やお茶の手摘み体験、美味しいお茶の淹いれ方教室など、多彩な普及活動を展開しています。毎年、輝北小学校で実施している茶摘み体験もその一つです。子どもたちは校内の茶畑で自ら茶葉を摘み、蒸しから揉みまでの製茶工程を体験し、出来上がったお茶を味わいます。
急須で淹れたお茶に馴染みのない子どもが増えている現代だからこそ、郷土が育んだお茶の魅力を五感で楽しんでもらい、日々の生活の中でお茶に親しむきっかけになってほしいと思っています。

▲寿北小での美味しいお茶の淹れ方教室

有限会社有島製茶の経営者の一人。
鹿屋市茶業青年の会「緑萠会」所属。
鹿屋農業高校、鹿児島県立農業大学校を卒業。
有島製茶Instagram(外部サイトへリンク)
私は最初から茶業をしようと思っていませんでしたが、農業を志す同世代と出会ったことが転機となりました。一緒に農業について語り合うなかで、興味を持ち一度やってみようと思ったのがきっかけです。父は私の選択にはあまり口を出しませんでしたが、一緒に働くことを決めたときはとても嬉しそうでした。
子どもの頃から父の仕事を見てきたつもりですが、実際に自分が仕事を始めて、改めて大変さや難しさを感じています。また同時に父への尊敬の念も高まりました。
有島製茶では全ほ場で有機JAS認証(※1)とアジアGAP認証(※2)を取得しているため、管理が大変ですが、一から作り上げた茶畑の絶景を見たときや、茶葉の匂い・味を感じたときにやりがいを強く感じます。この道を選んでよかったと思っています。
※1:化学物質に頼らないことを基本に、自然の力で生産された食品について国が定める国家規格
※2:食品安全・労働安全等の国際規格

▲荒武 康介さん(右)は高校の同級生。
門之口さんが声を掛け、共に働いている。
今の一つの目標として、茶業に関わらず、鹿屋の農業を同世代で支えていきたいという思いがあります。そのため、同世代の農業従事者をもっと増やして、後継者がいない農地を引き継いでいきたいと思っています。そこで私にできることとして、SNSによる情報発信を始めました。
SNSを通して、まずは自分のコミュニティを広げる。そこで興味を持った人へ農業を紹介したり、自社農地を拡大していく中で共に働いたりできたらいいなと思っています。最近では、SNSを通じて東京など県外から問い合わせも増えてきています。
「かのや茶は他の産地のお茶には絶対に負けない」という自信があります。今後もふるさとに誇りをもって茶業に励んでいきたいと思っています。

鹿屋市の茶栽培においては、国内のリーフ茶(急須等で淹いれるお茶)の国内消費量の減少に伴い、生産者数や栽培面積などが減少傾向にあります。
また、茶生産者の平均年齢も58.9歳(令和8年5月末現在)と高齢化が加速している状況です。このため、かのや茶を次世代につないでいくためには後継者や新規就農者の確保等が急務となっています。


明治の世から百六十余年、笠野原の広大な台地や輝北の清らかな山間などで、幾世代もの先人たちが紡いできたかのや茶の歴史。そこには土を耕し続けてきた生産者たちのひたむきな情熱が息づき、現代に引き継がれています。
お茶の美味しさと凝縮された旨味が詰まった最後の一滴『ゴールデンドロップ』。かのや茶のこの一滴には先人が紡いできた歴史と今を生きる生産者の想いが凝縮されています。
家にはいつもポットの前に急須が置いてあり、好きな時にお茶を淹れる。そのような情景が当たり前だった時代もありました。
慌ただしい朝の始まりに、あるいは少し疲れて帰ってきた夕暮れに、一杯の「かのや茶」がそこにあるだけで、心と体がすっと潤い、流れる時間が色づき始めます。
何でもない毎日の暮らしの中に、この心強い深緑のしずくを置いてみましょう。お茶を淹れるひとときがあなたの日々に溶け込み、欠かせない生活の一部となってくれるはずです。

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